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自己意識

鳥になろうとした魚

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昔々あるところに、野心に溢れた一匹の魚がいたそうな。

その魚はとても才能に溢れ、「すごいやつがいる。彼にできないことなど何もない」と噂されるほどの大変な評判であった。

 

その魚は海面をジャンプするのも上手であった。

他の魚たちはジャンプはおろか、海面から顔を出すのがやっとのことであったのに・・・

 

まぎれもなく、彼は魚たちのリーダーでありヒーローであった。

 

ある時、魚はこう言った。

「おい、お前たち、あの空を見てみろ! やろうと思えば、俺たちもあの鳥のように飛ぶことだってできるんだ!」

誰もがその言葉を信じて疑わなかった。

 

その日以来、魚は毎日毎日、鳥の飛び方を研究し続けることによって、鳥のように飛ぶための動きを完全に理解した。

頭で考えなくともその動きができるよう、何度も何度も繰り返すことによって、その動きを身体にも覚え込ませていった。

その習得には何年もかかった。

 

「よし、これで完成だ!」

魚は早速みんなに喜びの報告に行こうとした。

 

しかし、鳥が飛ぶような動きでは泳ぐことさえままならない。

 

飛び方の習得と引き換えに泳ぎ方を忘れてしまった魚は、そのまま海で溺(おぼ)れて死んだ・・・

 

その噂は瞬(またた)く間に、魚たちの間に広まっていった。

「魚が溺(おぼ)れて死ぬなんて、聞いたことがない・・・」

「知恵の実を齧(かじ)ってしまったあいつは、海ではなく己の才能に溺(おぼ)れてしまったんだよ・・・」

「いくら魚が飛べたところで、泳げなくては意味がない・・・」

 

魚たちの世界においては、そのような話題と教訓で持ち切りだったとか・・・

 

さらに魚たちが噂で聞く所によると、陸の上の世界においては、人間というなんとも奇妙な生き物たちが、みんなでそろって鳥になろうとしているそうな・・・

 

その話を聞いた魚たちは、皆こう思った。

「そんなやつらに食べられてしまうことだけは、ゴメンだね・・・」

そして今では飛ぶことに魅力を感じなくなった魚たちは、人間に捕獲されないためにも、その泳ぎに一層の磨きをかけることを誓ったそうな・・・

 

~おしまい、おしまい~

 

 

泳ぎを忘れた魚たちは、無様で不自然な泳ぎ方となり、やがては欲望と想念の海で溺(おぼ)れてしまうこととなる。

第12代ヤキソバーナンダ17世

 

私たち人間という魚たちにおいては、赤ん坊の頃の泳ぎが最も上手であったということは、なんとも情けない話である。

第18代ヤキソバーナンダ4世

 

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