魂の渇き ~聖なる水を飲み干す時~
この記事は2018.9.1、10:30に更新しました。
更新内容:記事中盤に一文を追加しました。
弟子:先生、ようやくお食事のご用意ができました。
ペヤンガーナンダ:はい。それにしても、すいぶん遅かったねぇ。何をしておったのかね?
弟子:はい先生。
日課の瞑想も終えましたので、次回の瞑想会の日程等について、仲間たちと連絡を取り合っておりました。
ペヤンガーナンダ:そのようなことをしておると美味(おい)しいかね?
弟子:先生、何を仰(おっしゃ)ってるんですか?(笑)
ペヤンガーナンダ:美味(おい)しいかと訊いておるんじゃ。
弟子:美味しいとか、そんなわけないじゃないですか。
ペヤンガーナンダ:そうか・・・
弟子:先生、私には意味がさっぱり、わかりません。
ペヤンガーナンダ:喉(のど)が渇(かわ)いておるんじゃったら、水はさぞかし美味しいじゃろうと思ってな・・・
弟子:・・・
ペヤンガーナンダ:わしはお前をこの聖なる水の溢(あふ)れるこの場所まで連れてきた。
なのに、お前は何をしておる?
「水が飲みたい・・・」
「とても喉(のど)が渇(かわ)いている・・・」
お前はいつも、そう言っておったではないか・・・
違うかね?
ならば、どうして水を飲み干さぬ?
どうしてこの場所に来てまで考え事をしたり、おしゃべりをしたり、瞑想をしたりして時間を潰(つぶ)しておるんじゃ?
弟子:しかし、その水をどうやって飲めばいいものやら・・・
ペヤンガーナンダ:お前は立つことや歩くこと、息をすることなどを誰から教わったんだね?
弟子:誰からも習っておりませんが・・・
ペヤンガーナンダ:ならば、それには努力も技術もいらない・・・
弟子:・・・
ペヤンガーナンダ:さて、そろそろ飯でも食べるとするか・・・
弟子:ハイッ!
そう言ってペヤンガーナンダ氏は、陶器でできた自慢の料理の器を部屋中に並べ始めた。
弟子:失礼ですが先生、お食事をなさるのではないのですか? 私はもう腹ペコです。
ペヤンガーナンダ:あぁ、そうじゃった、そうじゃった。飯でも食べるとするか・・・
そう言ってペヤンガーナンダ氏は、食事の作法について書かれた本を読み始めた。
弟子:先生! 私を馬鹿にしてらっしゃるのですか?
ペヤンガーナンダ:いやいや、飯を食べようとしておるのじゃが、どこから手を付けていいものやら・・・
弟子:先生! おふざけにならないでください!
もう、お食事の用意はできているのです!!
そのようなことをなさっていては、いつまでたっても食べられないじゃないですか!!!
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そうして、
ほとんどの探求者たちが、
聖なる水を飲み干すこともなく、
あの砂漠へと帰っていくのである・・・
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